尊敬する経営者がこだわる、一皿のカレー。
私が尊敬する経営者の一人に、
株式会社スカイスクレイパーの諸沢莉乃社長がいる。
CoCo壱番屋などのフランチャイズ店舗を運営する会社の社長だ。
現在24歳。
高校1年生、15歳のときにCoCo壱番屋でアルバイトを始め、
2024年5月、22歳で社長に就任した。
アルバイトから社長へ。
異例ともいえる抜擢である。
しかし、私が彼女を尊敬しているのは、
若いからでも、
女性だからでもない。
仕事に対する姿勢と情熱だ。
以前、諸沢社長の仕事に密着したインタビューを見た。
社長になった現在も店舗へ入り、
現場を自分の目で見ている。
その中で特に印象に残ったのが、
提供される一皿のカレーに対するこだわりだった。
カレーソースとライスの境目。
盛り付け。
商品の見え方。
会社のトップになっても、
見ているのは現場の細部だった。
それを見ながら、私はふと思った。
「本社から離れた店舗でも、本当に同じなのだろうか。」
一度、自分の目で確認してみたくなった。
11時過ぎ、実際に店へ行ってみた。

今日、11時過ぎ。
兵庫県内のCoCo壱番屋に入った。
店内は程よく空いていた。
慌ただしいわけでもない。
かといって、特別な時間でもない。
ごく普通の日の、
ごく普通の店舗の姿を見るには、
ちょうどいい時間だったように思う。
席に座り、カレーを注文した。
しばらくして、一皿のカレーが運ばれてきた。

まず、皿を見る。
CoCo壱番屋のロゴが、
客である私からきれいに読める向きになっている。
カレーソースは手前。
ライスは奥。
そして、
カレーソースとライスの境目もきれいに整っていた。
「本当だ。」
少し嬉しくなった。
調べてみると、
CoCo壱番屋ではカレーソースを手前、ライスを奥にするのが基本。
さらに店舗で提供するときには、
皿に印字されたロゴがお客様の正面に来るようにするという。
今日、私の目の前に出てきたカレーも、
その通りだった。
遠く離れた店舗でも、同じだった。
ここで私が感心したのは、
カレーの向きそのものではない。
本社から離れた兵庫県の店舗でも、
その基準が守られていたことだ。
社長がそこにいるわけではない。
本社の人間が横に立って、
一皿ずつ確認しているわけでもない。
それでも、
ごく普通の日の11時過ぎに注文した一皿に、
会社のこだわりが現れている。
経営者がこだわるだけならできる。
自分が現場にいれば、
違っているところを指摘することもできる。
しかし、本当に難しいのは、
自分がいない場所でも、そのこだわりが再現されること。
思想が基準になり、
基準が仕組みになり、
仕組みが現場の日常になる。
そこまで届いて初めて、
経営者個人のこだわりが、
会社の文化になっていくのだと思う。
そんなことを考えながらカレーを食べていると、
今度はテーブルに置かれた「おしぼり」が気になった。

ケースには、
程よい量のおしぼりが入っている。
片手で一つ取ってみた。
一枚だけ、すっと出てくる。
何枚も一緒についてこない。
多すぎれば、
圧がかかって取り出しにくくなる。
少なすぎても、
ケースの中で収まりが悪い。
「ひょっとして、この量まで計算されているのではないか。」
そんなことを考えた。
そこで、自分の席だけなのかと思い、
他の席のおしぼりケースも見てみた。
すると、
どの席も、ほぼ同じくらいの量に見える。
ますます気になった。
スタッフそれぞれの感覚で補充しているだけなのか。
それとも、
「片手で一枚だけ取り出しやすい量」
まで考えて、何らかの基準を設けているのか。
これは、まだ分からない。
だから一度、
CoCo壱番屋さんに聞いてみたいと思っている。
もし、そこまで決められているのなら面白い。
決められていないのであれば、
それもまた一つの発見だ。
「そこまで」に、会社の品質が現れる。
こういうことが気になってしまう。
しかし私は、
電気工事も同じだと思っている。
配管一本の通り。
盤内の配線。
表示の位置。
施工写真の撮り方。
書類の並べ方。
機能だけを考えれば、
「そこまでしなくてもいい」ことはいくらでもある。
電気が流れればいい。
設備が動けばいい。
そう考えることもできる。
しかし私は、
その「そこまで」に、会社の品質が現れると思っている。
社長が現場にいなくても、
同じ仕事をする。
本社から離れていても、
同じ品質を出す。
誰が担当しても、
その会社らしい仕事になる。
そして新しく入った人にも、
その基準が受け継がれていく。
それが「組織」なのだろう。
高校生のアルバイトから始まり、
22歳で社長に抜擢された一人の経営者。
そして現在も、
自ら現場に立ち続けている。
私が諸沢莉乃社長を尊敬する理由は、
こういうところにある。
理念は、語るだけでは文化にならない。
遠く離れた現場の、
何気ない小さな動作にまで届いているか。
今日、一皿のカレーと、
一枚のおしぼりを見ながら、
改めてそんなことを考えた。
関連リンク
株式会社スカイスクレイパー
代表取締役社長 諸沢莉乃さん
https://sky-scraper.jp/
CoCo壱番屋 公式サイト
https://www.ichibanya.co.jp/
